top of page

【おたよりコラム】大きな迷惑と大きな成長

 夏休みのプールの習い事のあと、私はたいへんなことをしてしまった。そのときの私はたいへんなことをしてしまったなんてまったく感じていなかったけれど、子どもたちと関わるようになった今、私の親は本当に気が気じゃなかったのではないかと思う。

 たいへんなことをしたのは、プールの夏期集中のレッスンの後のこと。夏休みということもあり、レッスンはいつもとちがって時間が早く、午前中にあり、お昼前に終わる、そんなスケジュールだった。私が習っていたプールは、家から4km弱ぐらいの距離で、バスや車で15分ぐらいの場所にあった。そしてその日もいつもと変わらず、プールの帰りは車で迎えにいくからねーと母から言われていた。いつもはプールをでてすぐ前のスペースか、止めれなかったらすぐ隣にあるユニーというイオンのような総合スーパーの前のバス停あたりに迎えに来てくれていた。どっちの場所もとなりを見ればぱっと見える。レッスンが終わって外にでてみたけれど、プールの前にはまだ車が来ていなかった。ちょっとユニーの前のバス停の方に移動して待つことに。ちょっと待ってみたけれど、車は来なかった。プールの前とバス停との間をふらふらと2往復ぐらいして、車がいつも来る方をのぞいて見ても、まだ車はきていない。そのときふと思った。「少し家の方に歩いてみたらお母さんおどろくかなぁ」「一本道だし絶対みえるからすれ違うことはない」と。そしてちょっとずつ歩き出した。最初は10歩進んでは立ち止まり、待ち合わせ場所の方を振り返ってみていた。すれ違う車をしっかりみながら。そして何度も振り返るうちになにかわからないが、「ちゃんと進めてる」という自信もでてきて、お母さんも「よくここまできたね!」といってくれるだろうと勝手に思うようになっていた。500mぐらい続く長い上り坂をのぼり切り、頂上の少し大きな交差点についた時、立ち止まって、これ以上進むべきかやっぱり戻るべきか、と考えたのをいまでも覚えている。ただ、そこは小学3年か4年生の男子、もう自分1人でなんでもできる!という自信、というより思い込みがすくすく成長しているころ。今まで歩いたことがない道、青空とさすような日差し、そしてうまくいっているという感覚、ワクワクドキドキの真夏の冒険がはじまってしまっていた。そこからはだんだんとすれ違う車も気にならなくなり、「家に着けば大丈夫!」「ひとりで帰れる!」「褒めてもらえる!」そんな気持ちで、せっせと歩いていた。そしてどれくらいかかったかはわからないけれど、4kmの距離を無事に家まで歩ききった。でもそこが冒険の終わりにはならなかった。誰もいない家をみて思い出した。午後、ピアノのレッスンがある、と。そして冒険は再び始まってしまった。家からプールと反対方向に4kmぐらいのところにあるピアノの教室に向かって迷うことなく歩き始めていた。レッスンバッグもなにも持たずに。でも家のあたりやピアノに向かう時のことはあまり覚えていない。きっと、母と会えないかもという不安はどこかへいってしまい、ただただひとり夏の大冒険を楽しんでしまっていて、ワクワク以外に頭にはなにもなかったのだと思う。

 結局どこでみつかったのか、むしろどうやって母と姉が私を見つけたのかわからないけれど、私は見つかった時に、母や姉の心配をよそに、楽しかったイベントの後のように思い出を話し始めていた。もちろん母からも姉からしっかり怒られた気がする。ただ、何を言われたかもまったく覚えていない上に、怒る母と姉に対し、なんでそんな怒られなきゃいけないんだろう、ちゃんと迷子にならずにいけたじゃん、と思っていたことを覚えている。この大冒険の後、変わったことがあった。私が習い事に行くときに、姉より先に子ども用のPHSというキッズケータイを持たされることになった。また、ピアノとかに行く時に、ときどき私は走っていくことが許されるようになった。車で行く母は、何ヶ所かチェックポイントを用意し、そこで車でまっていて、給水タイムとなっていたことを覚えている。今みたいにキッズケータイなどを持つこともなく、GPSで居場所がわかることもなかった時代。母には本当に心配をかけただろうと思う。私の「1人でできる」「1人でやりたい!」「もう大人だし」という気持ちからの失敗談は本当にたくさんある。ただ失敗談といったけれど、これほどまでに記憶に残っていること、きっと私の中ではすごく自信のついた大きな経験のひとつになっているのだと思う。子どもたちに無茶をさせてほしいというわけではないけれど、ひとりで挑戦した!やりきったという経験はものすごく大きな経験になるのではないかなぁと思う。ぜひ子どもだけでこんなこと挑戦をしたんだよーという話がきけること、楽しみにしています!


三尾 新

Kommentarer


特集記事
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
最新記事
アーカイブ
bottom of page